おしりオンラインTOP痔瘻痔瘻患者さんの声vol.1 肛門周囲膿瘍を伴うクローン病患者さんの声

Vol.1肛門周囲膿瘍を伴うクローン病患者さんの声

作曲家 オビナタナオマサさん作曲家 オビナタナオマサさん

クローン病との診断を受けるまで

苦しいけれど、新しい人生観を与えてくれたクローン病。
治療と仕事、日常生活を両立するために大切なこととは?

クローン病を抱えながらも、フリーランスの作曲家として活躍するオビナタナオマサさんに、治療と仕事・日常生活のバランスを保つための秘訣や病気の受け止め方などについてお話を伺いました。

1.クローン病の確定診断
まで15年以上。
痛みを我慢
していたことも。

クローン病と診断されるまでのことを教えてください。

オビナタさん確定診断を受けたのは35歳のときでしたが、今振り返ると、10代の頃に患った肛門周囲膿瘍のうようが最初の症状だったかもしれません。そのときは疾患と診断され、クローン病の確定診断まで15年ほどかかりました。

肛門周囲膿瘍のうようの痛みは、最初の頃は我慢してしまっていました。我慢がよくないとわかってからは、予約外で電話を入れたり、救急外来に直接行ったりするようにしています。今は、症状が出る前にその兆しがわかることもあり、その時点で病院を受診することが多くなっています。

2.自宅でできる
仕事を模索。
YouTubeで音楽配信を
開始すると、
楽曲制作の依頼を
受けるように。

フリーランスの作曲家という職業を選んだのは、どのような経緯でしょうか?

オビナタさん父やおじが演奏家だった影響もあり、中学生の頃から楽器には触っていました。家に楽器が数種類あり、教わったわけではありませんが、ギターを弾くようになりました。20歳の頃には、ほかの仕事をしながら副業として、音楽の仕事を父やおじと一緒にすることもありました。

病気になってからは、ふつうの会社勤めが難しい時期がありました。そこで、自宅でできる仕事をしようと、パソコンの使い方を勉強しはじめました。ホームページの作り方を覚え、動画投稿サイトのYouTubeで、ギター演奏やオリジナルBGMをアップロードしていたら、企業や個人事業主の方から「BGMを作ってほしい」と依頼を受けるようになり、今の仕事につながっています。

オビナタさんのアルバムがiTunes Store(メキシコ)で1位にランクインしました

オビナタさん驚きました。「えっ、外国なの?」と。ランキングを特に意識はしていませんでしたが、1位になったことはうれしかったですね。海外で話題になっているというのは統計情報を見て知ってはいましたが、ヒットチャートで上の方にくるとは、想像していませんでした。海外の方にも聴いていただいていると思うと、モチベーションがすごく高くなります。

実は、モチベーションが高いがゆえに、「もっとこういうものを作りたいのに何でこの程度しか作れないんだろう」と自分の才能とのギャップを感じることも、時にはあります。ただ、そういうことを考えているときは、病気のことは頭にないのです。それはそれでいいことなのかなと思っています。

※アルバム “カフェミュージックギター~ノスタルジア~”: iTunes Store (メキシコ) のニューエイジトップアルバム1位、iTunes Store (メキシコ) 総合トップアルバム12位(2021年4月19日)

3.病気のことばかり
考えない。
やりたいことに
目を向けて、
人生をもっと楽しく。

治療と仕事・日常生活のバランスを取るために行っている工夫はありますか。

オビナタさん工夫をしても、どうしても体調を崩してしまうことがあるのがこの病気の難しいところです。食事については、脂質と食物繊維に気をつけたり、無茶をしないようにしたりしています。あとは適度な運動をすること、起きる時間や寝る時間といった生活のサイクルを規則正しくすることに気をつけています。

この病気を通して気づいたことがあるのです。私のみならず、救急搬送されたり、緊急手術を受けたりと大変な思いをされている方もいらっしゃると思います。私も、先生から「危なかったね」と言われるような経験をしています。以降は、頂いた命だと思っているのです。ですから、1人でも、1曲でも、1分でも、たとえわずかでも、誰かの役に立ちたいという気持ちがあります。そういう作品を作るために、自分自身を律することができるような人間になっていきたいですね。

オビナタさんにとってクローン病を一言で表すと何ですか。

オビナタさん苦しいですが、新しい人生観を与えてくれた病気です。

クローン病の方ですごく尊敬している人生の先輩がいるのです。その方の生きざまを拝見していて、人生観が変わりました。その方は、自身が入院しているにもかかわらず、他の方の洗髪や散髪をするのです。そういう職業の方なのですが、自身の体調も大変だろうにもかかわらず、他の方の役に立とうとする。その姿を間近で見た経験が、私の音楽や生き方にも、大きく影響していると思います。

同じ疾患の患者さんやそのご家族、ご友人へのメッセージをお願いします。

オビナタさんつらいと言うことを我慢している方が多いと感じています。つらいときはつらいと、SOSを発信できるような場所があるといいのではないかと思います。身内でも仲間でもいいのです。患者仲間だと、共感してもらえます。

また、「闘病を人生のメインテーマにしない」という、あるIBD患者さんの言葉が印象に残っています。病気のことばかり考えないで、自分がやりたいことにフォーカスすると、人生の楽しさがもっと味わえるのではないかと考えています。

(2021年8月取材)

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